【転載】マリーヌ・ルペン女史(国民戦線党首)インタビュー記事
あの「朝日新聞」に、フランスの国民主義政党・『国民戦線』党首であるマリーヌ・ルペン女史のインタビュー記事が掲載されています。全文を転載しますので、是非とも御一読下さい。

「フランス社会の混迷 国民戦線党首・ルペンさんに聞く」

フランスで移民排斥や反イスラム主義を掲げる右翼政党「国民戦線」が、連続テロによる不安の高まりを受けて勢いづいている。かつての差別的な言動を封印して穏健路線に切り替え、反グローバル化の大衆政党として支持を広げてもいる。彼らは何をめざすのか。フランス社会は今後どうなるのか。マリーヌ・ルペン党首に聞いた。

――パリの週刊新聞「シャルリー・エブド」の襲撃に始まったフランスでの連続テロについて、どのように受け止めていますか。

「テロの原因を考えると、悲しくなります。イスラム原理主義が我が国に浸透していると、私たちはずっと以前から警告してきましたから。彼らは、一部の地域を占拠し、犯罪組織とつながりを持ち、世俗社会を尊重しません。自由なフランスの理念に対し、全体主義の立場から宣戦を布告しているのです」

「テロは手段に過ぎません。テロを生み出す理念こそが問題なのです。原理主義はイスラムのがん細胞。摘出しないと健康な細胞まで侵し、どんどん増殖する。フランス社会を分裂させ、自分たちだけの社会を内部に形成しようとする。そうなれば、政教分離の原則は崩壊するでしょう。政治は長年、この現実に目をつぶってきました」

「テロ直後に生まれた国民の一体感を強調するあまり、事件を招いた責任を忘れてはいけない。テロはなぜ起きたのか、私たちは何をすべきなのか、開かれた議論をしなければなりません」

――具体的にどんな対応をすべきだと考えますか。

「まず(欧州統合で廃止された)国境管理を復活させ、移民の流入を止め、刑罰の緩みをただすべきです。『原理主義を社会から孤立させよ』などと言う人がいますが、その前に(罪を犯した)彼らを逮捕し、処罰し、収容するための刑務所を増設しなければなりません」

「仮釈放なしの終身刑か死刑かの導入を選ぶ国民投票を組織したい。フランスにはどちらもありません。個人的には死刑を復活すべきだと思いますが、死刑に否定的なカトリックの伝統があるのも確か。国民の意見を直接問うべきです」

――でも、今回のテロの容疑者たちは、移民とは言い難いのでは。移民家庭出身とはいえ、国内で生まれ育ったフランス人です。

「いいえ。彼らはフランス人になることができた、というだけです。例えば(新聞社を襲撃した)クアシ兄弟。両親はアルジェリア人ですが、フランス領内で生まれたお陰で自動的にフランス国籍を取得しました。国籍へのもっと厳しい条件を課さなければなりません。ハードルが低すぎるから、移民も殺到し、フランス人から雇用などの権利を奪うようになるのです」

「国籍法の改定も欠かせません。二重国籍を廃止すべきです。祖国は一つしかあり得ない。どちらか選ばなければなりません」

――日本では、国内で生まれただけだと国籍を取得できません。二重国籍も違法です。

「私たちが求めるのは、まさにそのような制度なのです。出生地主義の廃止です。フランス人は、フランス人の親から生まれるか、フランスに帰化するかだけ。帰化自体は否定しませんが、そのためには罪を犯さず、規則と価値観を尊重し、フランス文化を共有し、運命を共にする意思を持つ必要があります」

――でも、労働力として移民を求めたのはフランス自身ですよね。財界の要請でしょう。

「確かに、指摘された通りです。給料を下げるために、40年にわたって移民を利用してきたのです。今、そのツケをみんなが払わされている。許せません」

――「私たち」と「彼ら」、「いい人」と「悪い人」を分けて考えすぎではないですか。まるで、敵味方がはっきりしたハリウッド映画のようです。

「私たちの活動の基本は愛国主義。だから、『私たち』と『彼ら』を分けるのです。ただ、『私たち』の中身は多様です。肌の色や宗教がどうであろうとも、フランス人はフランス人。私たちが守る対象です」

「何より国民が優先されなければなりません。雇用や住宅供給で、フランス人が有利に扱われるべきなのです。現状は、不法移民が優先されて、これらのサービスを受けています」

――かつては、左右、東西の対立軸が敵味方を分けていましたが。

「現代の世界を二分するのは、国家かグローバル主義かです。繁栄と治安とアイデンティティーを守るために国家を重視する考えと、国家など消え去ってしまえという考えとの対立です。ただ、グローバル主義とグローバル化は別の概念。(国家が世界と交流して繁栄を追求していくような)幸福をもたらすグローバル化は、もっと進めなければなりません」

――その対立軸で社会を二つに分断する野心を抱いているように見えます。

「その通りです。フランスの有権者は30年にわたり、右が嫌になったら左を、左がだめなら右を、という支持を強いられてきた結果、似たような政治が続いたのです。もっと本当の選択肢を示す必要がある。一方に右派政党や社会党や緑の党があり、もう片方に私たちのような国家重視の政党があるのが、民主主義に必要な選択の幅というものです」

――それは、大衆迎合的なポピュリストの発想ではありませんか。

「民衆の、民衆による、民衆のための政治をポピュリズムと呼ぶなら、私はポピュリストです。その言葉が侮蔑的な意味を持とうが、気にしません。今の政治は逆に、民衆を侮りすぎています」

――近年の国民戦線は、ウクライナ危機を巡って欧米が制裁対象としているロシアのプーチン政権に接近しています。

「ソ連崩壊後の苦しい時期を経たロシアが、経済復興を成し遂げた姿には、頭が下がります。米国とは異なる国家モデルをつくり上げたロシアは、戦略的関係を結ぶのに値する偉大な国家です。にもかかわらず、(制裁を求める)米国の指示に従うから、欧州連合(EU)はロシアと冷戦状態のような関係しか持てないのです」

――国民戦線はEUを批判し、欧州単一通貨ユーロからの脱退も主張しています。でもフランスは、EUから多大な利益を受けてきたのではないですか。

「全然受けていません。EUから得たのは、借金と、失業と、アイデンティティー崩壊だけ。EUのせいで、私たちは金融面、予算面、立法面での主権を失い、自分の運命を自分で決することができなくなりました。ごく少数のEU官僚が、市民の考えに反してすべてを決めてしまう。その結果、貧困と絶望がもたらされる。まるでソ連状態。私たちはこれを『欧州ソビエト連邦』と呼んでいます」

「私たちは、国民が自国の経済をしっかりコントロールする『愛国主義の経済』をめざしています。自由競争に基づき、金融の影響を大きく受ける『米国型のグローバル主義経済』は、我が国にも、地球全体にも、悲劇をもたらすと考えるからです。その点、日本はすばらしい。フランスが失った通貨政策も維持している。日本は愛国経済に基づいたモデルを示しています」

――あなたは党首に就任した2011年以降、右翼としての否定的イメージを拭う「正常化」に取り組んでいる、といわれます。ただ、国民戦線を依然として「差別主義」「排外的」と見なす人も少なくありませんね。

「活動家や党員の中には確かに、愚にもつかないこと、批判されて当然のことをする人が、いないわけではありません。ただ、それはどの政党も同じ。他党だと目立たないだけです。私たちは長年、政界全体を敵に回したために、不当な扱いを受けてきました」

「国民戦線が変化したとは思いません。国民戦線は、対抗する政治勢力から長年ばかにされてきました。これによって伝わらなかった私たちの真の姿を知ってもらう努力は、国民に次第に受け入れられています。最近の画期的な選挙結果からも、それは明らかだと思います」



Marine Le Pen 1968年パリ近郊ヌイイ生まれ。パリ第2大学卒。弁護士を経て2004年から欧州議会議員。11年に国民戦線党首就任。

■取材を終えて

極右、ファシスト、差別主義者――。国民戦線は厳しい批判を浴びてきた。党首や幹部の物議を醸す言動、移民や政敵を容赦なく糾弾する攻撃性が、その評価を裏付けていた。

そんな政党の党首をなぜ登場させるのかと、疑問に思う人もいるだろう。だが、国民戦線は近年、躍進を続けている。その主張を聴くことで、欧州の行方を読み解けないかと考えた。

連続テロの余波で慌ただしい14日、欧州議会で会ったルペン党首は、従来の「右翼」のイメージとは大きく異なっていた。不快であろう質問にも動揺せず、熱意を込めて語る。勢いのある新興企業の社長、といった感じだ。

実際、国民戦線の評判は急速に変わりつつある。反ユダヤ主義や露骨な差別主義を排除。若手や左派出身者をスタッフに迎え、経済、外交を含む包括的政策を整えた。工業地帯や炭鉱地区でグローバル化に不安を抱く労働者層、低所得者層に食い込んだ。

党の新世代を代表する仏北部エナンボモン副市長クリストファ・ジュレック氏はこう説明する。「以前は日本の右翼団体になぞらえられた。今は安倍晋三氏の自民党に近い政策の党だ」

ルペン党首も「めざすは日本の制度」との態度を隠さない。私自身時に批判した「右翼」が、日本を称賛する。喜ぶべきか、悲しむべきか。

右翼やポピュリスト政党の伸長傾向は、欧州各国でうかがえる。多くは国民戦線と同様、グローバル化に抗する砦(とりで)としての国家の復権を訴え、左右の大政党に対抗する勢力に成長した。ノルウェーなどでは政権に参加した。

フランスでも多くの研究者が以下の想定で一致する。2017年大統領選でルペン党首は決選に残り、22年には大統領選を制するかもしれない――。

では、国民戦線は本当に普通の政党になったのか。仏ルモンド紙のアベル・メストル記者は懐疑的だ。「移民政策など党の本質的な方針は以前と同じ。言い方を変えただけでないか」

敵味方をはっきりさせる党のポピュリスト的性格にも不安が残る。パリ政治学院のパスカル・ペリノー教授は「社会内部の紛争をあおる国民戦線は、依然として危険な存在だ。フランスに必要な党とは思えない」と語る。

国民戦線が政権を握ると、混乱の懸念が拭えない。逆に、フランスが大混乱に陥る事態こそ、国民戦線が権力に近づく時だろう。(論説委員・国末憲人)



〈国民戦線〉 1972年、反共産主義者や元対独協力者らを中心に結成されたフランスの右翼政党。当初は暴力的な活動家も多かったが、初代党首のジャンマリ・ルペン氏が議会主義を定着させた。大衆の不満を刺激して支持を得るポピュリズム色が強く、70年代は共産主義、80〜90年代は移民、2000年代以降はイスラム原理主義を激しく攻撃してきた。近年は欧州統合を批判することが多い。

02年のフランス大統領選では同氏が決選に進出。11年には同氏の三女であるマリーヌ氏が2代目党首に就き、昨年の欧州議会選で約25%の支持を得て国内第1党となった。

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