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三島由紀夫研究会のメルマガで拙論に御言及頂きました
三島由紀夫研究会と言えば、日本学生同盟の流れを汲む団体で、憂国忌を主催していることでも知られています。

同研究会のメルマガ(平成24年4月1日)に矢野一輝氏の「最近の皇室論を考える」という一文が掲載されており、その中で小生が執筆した『国体文化』(平成24年1月号)の巻頭言についても言及されているので御紹介いたします。

最近の皇室論を考える
            矢野一輝 (会員)
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 かつて男系か女系か論議がやかましかった皇統問題は、秋篠宮家に悠仁親王がお生まれになってから一旦鎮静していたかに見えたが、昨年暮に政府が女性宮家創 設を提起して以来再び議論が熱を帯びてきた。政府、宮内庁は女性宮家創設をいわゆる女系天皇とは切り離して、あくまで天皇陛下の御公務の負担を軽減し象徴 天皇を維持するため、女性宮家を創設して皇族の減少に歯止めをかけることに必要であると主張しているが、そこには何とか女系天皇に道を開きたいという底意 が看取されることは容易であろう。

 まず筆者の立場を明らかにするならば、本来皇室典範はあくまで勅諚によるものであ り、戦後憲法体制下で皇室典範が一般法になっていること自体がおかしいこと、本来皇統問題は臣下があれこれ詮索論議することにあらず、ということである。 もちろん男系論は筋が通っているしこのまま男系が維持されるのであればまことに望ましく何ら問題はない。ただ将来男系を前提とした皇統護持が危機に瀕する ことは疑いない現実である。一方で女系容認論の中には如何にして万世一系の国体を護持すべきか苦悩と煩悶の中から生まれてきたものもあることを認める。そ こで最近の皇室論議を概観してみたい。

 まず現在書店の店頭に並んでいる『わしズム』(小林よしのり責任編集・幻冬 社)なる雑誌を取り上げたい。まず表紙いや裏表ともに何とも小林よしのり氏の顔写真がでかでかと出ていてとても上品とはいえない。表紙に「女性宮家創設の 真相はこれだ!」という見出しがなければこの雑誌が高邁な論議をする雑誌とは思えないほどだ。更に中身を見て驚くのは、小林よしのり氏の巻頭論文と漫画に 続いて平泉学派の重鎮であり歴史学の泰斗である田中卓博士の「女系天皇公認の歴史的正当性」や高森明勅氏の「『女性宮家』創設のための皇室典範改正案」な どの女性宮家創設支持、女系天皇容認の主張がオンパレードで続く。

  田中卓博士の論は従来から主張されている通りだが、 要は「日本の国体にとって、不朽・不滅の鉄則は、天照大神の“天壌無窮”の『神勅』である。」こと、「天照大神が“女神”であることを思えば、皇統の始ま りが“女系”であったと申してもよいのである。」こと、「従って血統(世系)の上からは天照大神から始まるというのが皇室の所伝であり、これは正しく『女 系』と申して差し支えない。」のである。そして最後に田中卓博士は皇室典範改正を議する皇室会議に畏くも天皇陛下にもご親臨を仰ぎ、その場で典範改正が決 すれば

 これは御聖断を拝したことと同じであり、それこそ“承詔必謹”であるとする。以前から田中卓博士は皇祖(天照大神)が女性であること、またその子孫が三種の神器を奉戴して皇位を継がれるならそれが女性であろうと万世一系の国体は護持されると主張している。

 また高森明勅氏は男系論者が主張する旧皇族の皇籍復帰論は非現実的であるとし、女性宮家創設そして女系天皇を認めることが現実的な解決策だと主張する。旧 皇族といっても厳密な意味での旧皇族方はもはや年齢的に皇太子殿下よりもはるかに年長でありこういう方々が皇籍に復帰して皇位を継ぐのはありえないし、旧 皇族を広い意味での旧皇族の家に生まれた男子の子孫と言い換えても一般国民として生まれた人間が皇位につくこと自体君臣の分をないがしろにする危険性があ るとする。高森氏はこの点を葦津珍彦や里見岸雄などの国体論を引用して強調する。

 但し問題なのは、高森氏が女性宮家創 設問題が提議された背景には畏れ多くも天皇陛下の御憂念があるとし、従ってこれは女性宮家創設は大御心である、という議論に発展することになり、そうなれ ばこれに反論する者は逆賊であるということになってしまうに等しい。そうなれば一切の議論は出来ない、問答無用ということになりかねない。

 田中卓博士や高森明勅氏は何れも尊皇心のあつい、国体護持については絶対的な信念を抱かれている立派な方と思う。だが小林よしのり氏の議論は如何であろう か。得意の漫画を駆使して男系天皇維持を主張する八木秀次氏、安部晋三氏、竹田恒泰氏らを徹底的にこきおろす。(その似顔絵がうまいのはさすがに感心する が)けれども小林よしのり氏が「陛下のご意志は女性・女系天皇の公認だ」と放言して、男系論者を「『Y染色体』カルト」とか「全く尊皇心のない」「わざと 皇統を絶やそうとしている者たち」と罵詈雑言をいいまくるにおいて本来あるべき君子の議論が品性も何もあったものでないレベルに堕ちてしまっているのは残念である。

  一方男系天皇維持派の論者もまた議論をエスカレートさせて、女性宮家創設論は女系天皇に道を開き、結局は万世一系の皇統を断絶させてわが国体を滅亡させようとする法匪官僚や左翼勢力の策謀だとする。(上記以外にも小堀桂一郎、百地章、新田均の諸氏など多数)その主張は論壇で言い尽くされてきたので、紙幅の関係上割愛する。

 ここで筆者が卓見だと思ったのは、国体論の若き論客である金子宗徳氏の「かような重大問題については、天皇陛下の御聖断を仰ぐべき−そのためにも、「皇室会議」の拡充が強く望まれる−であり、臣子たる国民は(女系天皇の公認・旧皇族末裔への皇籍付与も含めた)あらゆる選択肢を提示し、公論を尽くすことしか できぬのではないか。その際、如何なる形であれ、大御心を制約するが如き言動は厳に慎まねばならぬ。天皇の御位に即かれ、国家・国民をしろしめす広大なる 皇恩に感謝こそすれ、皇位継承を巡り「〜して頂きたい」などとマスコミを通じて発言することは、尊皇心に基づく行為であったとしてもゆるされない。」 (『国体文化』一月号掲載「臣子たる分を弁えて議論すべし」より引用)とする発言である。まさに卓見、正論である。

 またやはり四宮正貴氏は「『皇室典範』は本来「勅定」であり国民や権力機構が干渉してはならない」、「臣下・政治家が『皇室典範』を改定すること自体、不 敬不遜の極みである。」(『政治文化情報』三月二十五日号より)要するに承詔必謹、ただ大御心にまつべしと主張する。金子宗徳氏も四宮正貴氏も過熱する一 方の皇統論議を今一度冷静な状態に戻そうということである。

 あと次に西尾幹二氏の新著『皇太子様への御忠言』(ワッ ク出版)にも触れておきたい。本書は四年前に出された同名の書の改訂版である。本書は序章につづいて、書名にもなっている第一章「皇太子様への御忠言」と 第二章「皇位継承問題を考える」の三章からなっている。第二章の皇位継承問題については西尾幹二氏は男系尊重派、女系容認批判派であり、上記にも触れた田 中卓、高森明勅あるいは所功の諸氏による女系容認論を厳しく批判する。とともに男系が正しいとするのは何も国体護持派だけでなく、奥平康弘氏のような左翼 の天皇制廃止論者まで将来男系が断絶すればそれをもって日本国体は断絶するとみなしていることを紹介している。西尾氏はこれを「目に見えない皇室の敵」と して警戒を呼び掛けている。国体護持派が男系だいや女系だと争っている間に、「目に見えない皇室の敵」はやがて国体が終焉するときをひそかに待っていると いうことである。西尾氏の警告は真剣に受け止める必要があろう。

  さて序章と第一章だが皇太子様への御忠言というより も雅子妃殿下への批判がメインとなっている。これについては以前この論文が雑誌に発表されたときに竹田恒泰氏が西尾氏を「朝敵」と批判して話題となった。 皇太子殿下が将来の天皇たる御自覚に欠けておられる、その最大の理由は雅子妃殿下にあるというのが西尾氏が言い続けてきたことである。だが本書ではそれが エスカレートして妃殿下の父君たる小和田恒氏への個人攻撃にまでいたっている。西尾氏いわく「小和田氏はその師・横田喜三郎氏と同様に、何が何でもあの戦 争で日本を一方的に、永久に、悪者にしたい歴史観の持ち主なのだ。」「妃殿下が皇族としての必要な席には欠席なさるのに、妹たち一家と頻繁に会っている様 は外交官小和田氏と無関係だと言えるだろうか。」「雅子妃のご父君は娘にどういう教育をしてきたのでしょうか。日本人にとってご皇室とは信仰の源であり、 畏れ多いのだという認識が小和田一族に欠けていることに根本があるのではないか。」と矛先を小和田恒氏にまで向けている。

 また西尾氏は、デヴィ・スカルノ夫人がネット上で皇太子廃嫡の書名運動を行う過激な行為について「行き過ぎであることは明らかですが、その心情は理解でき ます。」と弁護さえしている。本書で西尾幹二氏が展開している皇太子及び同妃殿下に対する非難には一部に同調する読者もいるかも知れないが、しかしこれは 竹田恒泰氏が厳しく批判したように君臣の分を逸脱した僭越な作法と見なされても仕方ない。また妃殿下のご実家とご父君のことをあれこれいうことは全く問題 の本質とは関係ないことである。

 以上最近の皇室論議を概括してきたがこの論議に出口が見えないことに憂慮するもので ある。女性宮家創設が提起されて以来、大マスコミは一斉に女性宮家創設賛美論を展開している。世論調査では女性宮家創設賛成派が多数であり、NHKの大河 ドラマでは朝廷のことを「王家」と呼んで誰も異を唱えない。次第に皇室が欧州の王室と同じである、あるいはそれで構わないという認識が広まろうとしてい る。

 最後にこの新春、富岡幸一郎氏が『週刊ポスト』誌(1月27日付発行)に発表した「女性宮家創設の前に読んでお きたい三島由紀夫の天皇論」という論文に触れたい。富岡幸一郎氏はこの論文の中で三島の『文化防衛論』が示した「文化の象徴としての天皇」すなわち「文化 概念としての天皇」を紹介するとともに、「文化概念としての天皇」は「菊と刀」との永遠の連環のなかにあるものであり、そこに戦後日本への根本的批判が含 まれているとする。そして富岡氏はいう。「天皇の歴史的本質を自覚することなく、ただ皇室の存続を、現在だけの地平で喧々囂々するのであれば、天皇などは 要らない。三島はそう言いたいのではないだろうか。」富岡氏は女性・女系天皇論に反対し、男系維持を主張する立場である。しかし、その議論の前に天皇とは 何か、わが国体とは何かその歴史的本質を明らかにしておく必要がある、という富岡氏の主張の正しさと深さは正に至当といわざるをえない。


JUGEMテーマ:政治思想
 
| 記事掲載 | 14:17 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
勉強になりました。小林よしのりの説には驚きました。
| 池田達彦 | 2012/04/08 8:39 PM |
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